決算書でわかった 損害保険会社値上げのからくり

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決算書でわかった 損害保険会社値上げのからくり

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2019/11/21 決算書でわかった 損害保険会社値上げのからくり

2018年11月13日から14日にかけて、損害保険三3社が、火災保険料を来年引き上げる、というニュースがテレビニュースや翌日の新聞に記事として掲載されていました。

 

保険の考え方は相互扶助であり、少ない掛け金で大きな損害に対して補償を受ける、という基本的な考え方がありますので、安定的に支払いができるよう健全な財務状態を維持することに異論はありません。

 

ではありますが、本当に保険料を上げなければならないのか、このタイミングであれば保険料の引き上げに世論は同調してくれるのではないか、と仕掛けてきているように思えてならないのです。

 

私がここでいくら騒いでも何の影響もありませんので、決算書を見るとこんなことが分かるよ、という程度の戯れ言だと思い、読み進めてください。 

 

今回の値上げは、一社当たり火災保険で4000億円を超える、とか3000億円台半ばまでふくらむ、2004年に三つの台風で支払われた7500億円弱の保険金が過去最大だったのに、今回は1兆円を超える、非常事態である、というような論調です。

 

通常の支払額より1社あたり、1000億円くらい余分に支払いが生じている、と言われると大事だと思いますが果たして本当にそうでしょうか。

 

 MS & AD インシュアランスグループの決算書、損保ジャパンの決算書二つをささっと見てみました。

 

https://www.sompo-hd.com/~/media/hd/files/doc/pdf/news2019/20190520_2.pdf 

 

https://www.ms-ad-hd.com/ja/ir/library/earnings/main/00/teaserItems2/01/linkList/0/link/kss_2019_1-1.pdf 

 

詳細は損保ジャパンは13ページあたり、MS & AD は 8ページあたりをご覧ください。

 

いきなり結論を言うのもなんですが、元々火災保険収入と火災保険支出のバランスは棄損しているのが日本の損害保険会社の実態でした。

 

火災保険に関して言うと、保険収入より支出の方が大きいのです。

 

損害率という表示があるのですが、収入より支出が大きいと100%超えてしまい、駄目ですよね、という指標のようです。

 

損保ジャパンは107%、 MS & AD の三井 住友海上火災は104%でした。

 

流動比率みたいなものです(流動比率は100%以上なければだめでしたね)。

 

ではこのダメダメなバランスをどこで保っているかと言うと、自動車保険なのであります。

 

損保ジャパンの損害率は69.8%、三井は66.2%です。

 

しかも保険会社の保険料収入全体の構成をみると、損保ジャパンは自動車保険の保険収入が50%超え,三井住友海上は43%超えでありました。 

 

自動車保険で安定的な収入を保ち、火災保険のマイナス部分を補っている、これがこの業界の特徴のようです。

 

これを機会に少しでもセグメント別のバランスを良くしたいということなのではないでしょうか。

 

であれば、自動車保険料はもっと安くしてもらわないと割に合いませんね。

 

そもそも、値上げするってことは、毎年同じだけの保険料を支払う事象が起きるってことですよね?

今回は特別な風水災害だから大きな金額が出たんじゃないの?

来年も再来年も直撃するの???

 

今回乗り切ればいいんじゃないの?

ちょっと工夫すれば、なんとかなるんでないかい?

 

白菜の1/4が180円は高いぞーとか、きゅうり一本特売で30円は安いな、などと言っている私等一般庶民の感覚では、全体で1兆円支払い、なんて聞くと仕方ないなあ、と思ってしまいますが、誤魔化されては行けません(笑)。

 

保険収入と支出をみると、直近の決算で、

損保ジャパン 収入 2兆1千億円、 支払い1兆4千億円。

MS & AD  収入 3兆5千億円、支払2兆1千億円。

これ、正味の保険料だけなので、その他の保険引受金額を足すとMS & AD は4兆9千万円。

 

そんな中で支払いが1千億円増加するかた大変なので値上げするぞって、何だか腑に落ちないですね。

 

勿論、その他色々な費用がかかるので、単純にこの金額だけを捉えて、値上げがけしからん、とは言いませんが、決算書をよく見てみると、「一般企業だったら、これは自助努力で乗り切るぞ」的な突っ込み何処が満載であります。

 

この文章をご覧になっている企業の皆さんも、中小企業経営者の皆さんも、自助努力や工夫をこらして経営されているのですが、問題が起きたら「皆さんよろしく、値上げオッケーでしょ」で解決出来れば楽ちんですね。

 

電力会社の再エネ発電賦課金とおなじで、費用は利用者に負担してもらいましょ、的な安易な考えが見え隠れしています。

 

じゃ、自分が逆の立場だったらどうする、と言われると、「民草よおかみに従え~」となるのでしょうか。

 

文句ばかり言っても、一銭にもならないので(笑)このあたりで筆を置く事にします。

 

 

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